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2026/01/22公開

地域を守る!
狂犬病予防接種率アップを実現する7つの施策

地域を守る!<br>狂犬病予防接種率アップを実現する7つの施策

長らく日本では発生していない狂犬病ですが、世界では未だ多くの国で犠牲者が出ており、狂犬病予防接種は地域を守るためにも非常に大切です。
そこで今回は、病院が地域のために行える狂犬病予防接種率アップのための施策を7つご紹介します。

狂犬病の予防接種率の現状と課題

厚生労働省のデータによると、2023年時点の全国平均の狂犬病予防接種率は約70.2%。
集団免疫の指標とされる「70%」をわずかに上回る水準であり、安定的な防疫体制を維持するには決して安心できる数字ではありません。

狂犬病の国内侵入を防ぐには、動物病院が率先して接種の重要性を啓発し、実際の接種率向上につなげることが不可欠です。

【注目トピック】2027年度から「通年接種」へ移行予定

2025年11月、厚生労働省より「狂犬病予防接種の時期に関する通達の見直し」が発表されました。
これまで「4〜6月が原則」とされていた接種時期が、2027年4月より“通年接種”を推奨する運用に移行する予定です。この見直しの背景には、飼い主様の利便性向上や、春季の動物病院の過度な混雑を緩和する狙いがあります。

これは病院経営にとっても「春の繁忙期の業務平準化」を図る大きな転換点と言えます。あえて混雑を避けた秋〜冬に、健康診断とセットで接種を提案するなど「利便性の向上」と「質の高い医療提供」を両立させる新たな診療サイクルの構築が可能になります。

しかしながら、まだしばらくは「春にまとめて予防接種」という従来のスタイルが主流である状況は続きそうです。今後も国の動向に注視しつつ、狂犬病予防接種率の向上にむけた取り組みを考えていきましょう。

①予防接種未実施患者へのアプローチ

〈カルテ分析で未接種者リストを作成〉

未接種の患者をカルテから抽出し、ターゲットを絞った案内(DM・SNS配信・電話など)を実施しましょう。
年代ごとのメディア利用傾向に合わせた手段が効果的です。

・シニア層:電話やハガキ
・若年層:LINEやInstagram、メールなど

〈リマインダーは時期と内容を工夫〉

案内のタイミングは、従来の接種開始時期である4月に合わせ、その1ヶ月前の「2月下旬〜3月上旬」と、直前の「3月最終週」2段構えで行うのが理想的です。

伝える内容は「人にも感染する恐ろしい病気」といった危機感の共有だけでなく「家族を守るための安心感」や「スムーズな予約受付のご案内」など複数の観点から用意しましょう。

②院内啓発とスタッフ教育の徹底

〈待合室に啓発ポスターを掲示〉

厚生労働省や自治体が作成したポスターを有効活用し、エントランスや待合室、トイレなど飼い主様の視線が集まる場所に掲示します。掲示物が多すぎると情報が埋もれてしまうため、情報の取捨選択と適切な配置が重要です。
もしスタッフにデザインが得意な方がいれば、院独自のオリジナルポスターを制作するのも有効です。

内容は「感染経路」や「症状」だけでなく「なぜ毎年打つ必要があるのか」という医学的な背景も盛り込むと効果的です。

〈受付で予防接種を推奨〉

新規の患者様には受付で「狂犬病予防接種はお済みですか?」と積極的に声かけするようにしましょう。

全スタッフが「法的な義務」や「公衆衛生的意義」を理解し、飼い主様へ丁寧に説明できる体制を整えることが、病院全体の信頼強化にもつながります。

③受診ハードルを下げる利便性の追求

〈予約システムの導入〉

飼い主様が予防接種を受けようと思ったときに、すぐに予約ができるように「予約システムを整えておく」ことは非常に重要です。
電話対応だけでなく、Web予約やLINE予約など、飼い主様のライフスタイルに合わせた予約方法に対応することで、受診の機会損失を防ぎやすくなります。
システムを導入・運用する際は、予約状況の確認や変更、キャンセルがスムーズに行えるかどうかなど、ユーザー側のUI(使い勝手)も十分に検討しましょう。

〈予防接種のみの曜日や時間帯を設ける〉

2025年の運用見直しにより通年接種が推奨されるようになったことを受け、特定の期間に限定せず、接種枠を柔軟に設定することが可能になりました。

たとえば、狂犬病予防接種の強化期間は多忙な飼い主様のために夜間診療の枠を設けたり、土日祝日の対応を強化したりするなどが考えられます。
また、高齢の飼い主様などに対しては、往診によるニーズも潜在しています。なお、往診を行う際には、獣医師法や各自治体の条例を遵守した形で運用を進めましょう。

④予防接種に付加価値を

〈予防接種と一緒に健康チェックや健康相談を実施〉

予防接種を単なる「義務」で終わらせず、受診そのものにメリットを感じていただく工夫が効果的です。たとえば、予防接種と簡易検診をセットにした「健康相談キャンペーン」などを実施し、日頃の不安や疑問を気軽に相談できる場を提供します。
体重測定や聴診、触診などを通じて愛犬の現状を可視化し、食事や運動、飼育環境に関するアドバイスを行うことで、予防医療への意識を高めるきっかけにもなります。

〈キャンペーンや特典を用意〉

受診の動機付けとして、独自の特典を用意する病院も増えています。
狂犬病予防接種を受けた方へのノベルティ進呈や、次回の診察時に利用できる優待の設定などが一例です。
また、多頭飼育の飼い主様に対して、2頭目以降の負担を軽減するプランを提示することも、接種率向上に向けた効果的なアプローチとなります。

⑤情報発信の強化

〈ホームページやSNSを活用〉

病院のホームページやSNSで、狂犬病予防接種に関する情報を積極的に発信しましょう。狂犬病の危険性や予防接種の重要性、接種の流れなどを分かりやすく解説した記事や動画を掲載するのもよいでしょう。
また、飼い主様からの質問に答えたり、予防接種に関する情報を共有したりする場として、オンライン上で簡易的なコミュニティを運営するのも有効です。

〈地域メディアとの連携〉

地域のテレビやラジオ、新聞などと連携し、狂犬病予防接種に関する情報を発信することも有効です。地域住民への啓発活動を強化することで、予防接種率の向上に貢献できます。

こうした活動は地域とのネットワークを構築するだけでなく、病院の認知度を高め、新規の飼い主様を呼び込むきっかけにもなります。

⑥効果測定と改善

〈予防接種率の比較から改善点を見つける〉

定期的に接種実績を集計し、過去の数値と比較することで、実施した施策の効果を検証します。目標達成率や、どの属性(犬種、年齢、居住エリアなど)の接種率が低いかを分析し、次の一手の精度を高めていきましょう。

〈アンケートを実施しサービス向上へ〉

接種済み・未接種双方の飼い主様に対し、アンケートや聞き取りを行います。
「なぜ接種していただけたのか」「何が受診の障壁になっているのか」という生の声を収集し、サービス改善に反映させます。飼い主様のニーズに合致した施策を展開することで、着実な接種率向上へと繋げることができます。

⑦継続こそ力なりで狂犬病の予防接種率に貢献

〈PDCAサイクルを回す〉

狂犬病予防接種率の向上は、一過性の取り組みではなく継続が何より重要です。目標設定、実行、評価、改善のPDCAサイクルを回し続けることで、地域に根ざした強固な防疫体制を構築できます。

〈ナレッジ共有と更なる改善に向けて〉

分析したデータや成功事例をスタッフ間で共有し、現場の声を次の改善に活かす仕組みを作りましょう。病院全体の対応力が向上することで、より質の高い医療サービスの提供が可能になります。

こうした市場調査の結果も参考にしながら、自院のエリア特性に適した最適解を模索してみてはいかがでしょうか。

「狂犬病ワクチンに関する飼い主の意識調査」結果はこちらに掲載しています

まとめ

狂犬病予防は動物病院が担うべき公衆衛生上の責務であると同時に、2025年の通年接種推奨という転換点は、春の業務分散と経営の安定化を図れる大きな好機でもあります。デジタル活用や付加価値のあるサービス提供によって「受診のハードル」を下げ、スタッフ一丸となって継続的な啓発に取り組むことが、地域全体の安全と貴院の信頼向上につながります。

当メディアでは、今後も獣医学業界の最新ニュースや、動物病院経営を支える実践的なTIPSを継続して発信してまいります。貴院の持続的な発展と、より良い診療体制の構築にぜひお役立てください。

■参考文献
厚生労働省.“都道府県別の犬の登録頭数と予防注射頭数等(平成26年度~令和5年度)”
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/01.html,(2026/01/16)
厚生労働省.“2025(令和7)年11月14日 狂犬病予防法に基づく予防注射時期の見直しについて”
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001594793.pdf,(2026/01/16)
時事ドットコムニュース.“狂犬病予防注射を通年化へ 自治体負担を軽減、27年度から―厚労省”
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025111400780,(2026/01/16)

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