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2025/12/01公開

2035年の動物病院業界はこう変わっている!
【第1回】病院数・飼育頭数、飼い主の意識はどのように変わっているか

2035年の動物病院業界はこう変わっている!<br>【第1回】病院数・飼育頭数、飼い主の意識はどのように変わっているか

近年、動物病院業界ではグループ経営やM&Aによる統合が進み、経営の在り方や獣医療従事者の働き方にも大きな変化が見られます。筆者も動物病院の経営者様とお話をさせていただく中で、変化に取り残される不安の声を聞くことが散見されるようになりました。

そういった中でPCEPAでは「2035年の動物病院はどのように変わっているか」をテーマに、動物病院経営者の皆様へいくつかのテーマについてどのようにお考えか一斉調査を行いました。本稿では、その結果をご報告させていただきます。

調査したテーマは以下の7項目。

第1回報告分(◀今回)
①病院数・飼育頭数の変化
②飼い主の意識はどう変化しているか

第2回報告分
③医療技術(DX・医療水準)の変化
④一次病院の機能の変化

第3回報告分
⑤獣医師・看護師のキャリアと人材流動性
⑥2035年に重要となるテーマ
⑦自由記述によるコメント

初回となる今回は、その中から①動物病院数・飼育頭数の変化と、②飼い主の意識はどのように変化しているかについて、ご紹介させていただきます。またその結果について、ミズノ動物クリニックの院長 水野先生にご感想を伺いました。

アンケートにご協力いただきました皆様には心よりお礼申し上げます。

動物病院数と飼育頭数の変化

<病院数の見通しは割れる一方、飼育頭数は減少予想が多数>

全国の動物病院数については「やや増える」・「大幅に増える」がほぼ半数と最多でしたが、「ほぼ変わらない」が2割強「やや減る」・「大幅に減る」も3割近くとなり、見通しは分かれました。増加基調がしばらく続くとみる一方で、自由記述では「10年以内に高止まり後、停滞〜減少へ」という慎重な見方をされている方も一定数存在することが示されました。

対照的に飼育頭数「やや減る」と「大幅に減る」を7割超が選択。「大幅に増える」は0「やや増える」も1割程度と悲観的な見方が中心。自由記述でも「頭数減の根本課題に向き合う重要性」の指摘が散見されました。

飼い主の意識の変化

<高度医療志向の高まりとデジタル活用の一般化>

飼い主側の意識の変化としては、高度医療を受ける意向の上昇や、予約・決済・情報取得等におけるデジタル活用の一般化を見込む声が目立ちました。

ペット保険の加入や、予防・ウェルネス支出の増加といった声も多くあり、高度医療に伴う医療支出の増加への対策や、予防などの充実による健康寿命の向上なども増えていくことが見えてきました。

一方で、価格の比較やサブスク型のビジネスモデル、在宅ケアなどはあまり変化しないという結果となりました。

ミズノ動物クリニック 院長 水野先生の解説

<ペットの飼育頭数の減少に対して考えるべきこととは>

結果からも出ている通り、飼育頭数の減少は今後大きな課題・テーマだと感じます。特に今考えるべきなのは個々の病院の売上を向上させることだけでなく、より多くの人がペットを飼えるような環境を作っていくことだと感じています。
そういった中で、病院の質をいかにあげていくかが今後重要となっていくでしょう。ただ「病院の質」というのは高度医療に対応している、であったり、専門の診療科を増やす、ということだけでなくインフォームの質を上げることや、ケアの質を向上させることといった、大きな投資を伴わないものという意味も含まれます。個人病院は特にそういったことにも着目し、多くの人がより飼いやすい環境作りを担っていく必要があると感じます。

<飼い主側の変化と病院連携の必要性について>

今回のアンケートで飼い主の変化として出ている項目については、すべて10年後ではより重視されるのではないか、と思います。そういった中で「高度医療の受療意向が高まっていく」という点について、動物病院としては病院連携や地域協力体制を強化していくことが重要だと思います。
例えば、最近私の病院の近くに夜間診療の病院が開院しました。これは脅威ではなく、連携や教育、育成の機会ととらえており、スタッフの研修や患者さんの紹介などの連携の強化を検討しています。
競合関係として対立するのではなく、協力して地域社会に貢献することで、冒頭にもあります「多くの人がより飼いやすい環境を作っていく」ということにつながるのだと思います。

<全体を通して>

獣医師、愛玩動物看護師、トリマーなどのスタッフ育成も、より積極的に行っていくことが大切です。スタッフの質を高くし、その若い人たちが今後の動物病院業界を引っ張っていくことで、業界全体だけでなく最終的には日本の未来を明るくしていくことにつながるのだと思います。

 

第2回・第3回では、DXや医療技術の展望、人材流動性、2035年に向けた重要テーマなど、より詳細な分析をご紹介しています。

【第2回】医療・病院の進歩(DX化・医療技術)と、一次病院の位置づけの変化
【第3回】獣医師・看護師のキャリア形成、10年後の最重要テーマとは

※続編はPCEPA会員様向けコンテンツとなります。
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■ 調査概要
・アンケート期間:2025/10/29~11/14
・調査方法:インターネット調査およびWeb面談等での聞き取り調査
・回答数:59名の動物病院経営者様

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