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2026/03/16公開

【PCEPAコラム】いまさら聞けない「LTV」の話—「顧客生涯価値」ってなに?

【PCEPAコラム】いまさら聞けない「LTV」の話—「顧客生涯価値」ってなに?

「新規の来院を増やしても、忙しいばかりで、なかなか経営が安定しない…」そう感じている院長先生は、少なくないはずです。
その原因を読み解くヒントになるのが、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)という指標です。業種を問わず経営判断に活用されているこの考え方を、動物病院の診療・来院・飼い主さんとの関係に置き換えながら解説します。

どうしてキャッシュバックが成り立つの?

家電量販店でネット回線を契約すると、数万円のキャッシュバック——こんなキャンペーンを見かけることがありますよね。
ときには「それ、1年分の利用料より多いのでは?」と思うことも。

しかし、通信会社も思いつきでお金を配っているわけではありません。
「そのお客さまが将来どれくらい利用してくれるか」を見込んだうえで設計されています。

そこで登場するのがLTVという考え方です。

動物病院にとってのLTVとは

動物病院でのLTVを一言でいうと、

1組の飼い主さん(=1頭/1家族)が、初診から通院が終わるまでに病院へ支払う合計金額

のことです。

月の売上だけを見ていると、季節や天候によって数字が変動しますよね。LTVを見ると、目先の集客だけでなく「長く選ばれるために何を整えるか」が見えやすくなります。

(通信会社が大きな特典を出せるのも、長く使い続けてもらいやすく、結果としてLTVが高くなりやすいから——というイメージです。)

初期投資をかけても、長期的な収益を見ると黒字化することを示した計算式

なぜ今、動物病院でLTVが大事になっているの?

理由はシンプルで、動物病院の経営が「新規来院を増やせば伸びる」だけでは成り立ちにくくなってきているからです。

・新しく来院してくれる飼い主さんに知ってもらうための費用が上がりやすい(広告・SNSなど)
・病院が増えて、比較・検討されやすい
・人手不足で診療枠を無限に増やせない(増やすほど現場が苦しくなりやすい)

限られた診療枠で安定した経営をするには、一度来てくれた飼い主さんとペットに、安心して通い続けてもらうことが重要です。

また「広告にいくら使えるか」を考えるときも、LTVが分かると“回収できる範囲”を判断しやすくなります。

LTVの計算(まずはざっくりでOK!)

動物病院の場合のLTVの計算式:診療費用×来院回数(年)×通院年数
動物病院で使いやすい形は、まずこれで十分です。

LTV=平均の1回あたり会計×年間の来院回数×通院年数

たとえば、平均会計が1.2万円で、年3回、5年通院した場合、このように計算できます。

1.2万円×3回×5年=18万円(1家族あたり)

より実践的な目線で見るなら、薬剤や検査キットなど「診療が増えるほど増える費用」を考慮すると、現実の数値に近づきます。とはいえ最初は、おおよその把握からでOKです。

LTVを伸ばす4つのポイント


LTVは分解すると、改善の方向が見えてきます。ポイントは大きく4つです。

1)1回あたり会計:納得して選んでもらう

コツは「1回あたりの会計を高くする」ではなく「価値が伝わる」こと。
検査や治療の目的、選択肢、優先順位、費用の目安を分かりやすく伝えるだけで、ミスマッチが減りやすくなります。

2)来院回数:必要な通院が途切れない仕組み

「来なくなるのを防ぐ」「必要な通院に忘れずに来てもらう」ことは、非常に重要です。
次回の目安を伝える、予約を取りやすくする、健診や予防の案内を出す——こうした仕組みで「気づいたら途切れていた」を減らせます。

3)通院年数:信頼が積み上がる体験

待ち時間の見通し、説明の分かりやすさ、結果の共有、フォローの一言
——こうした積み重ねが「この病院に任せたい」につながります。
特に初診から2回目は不安が強いので、ここで安心感を作れると通院が続きやすくなります。

4)新規の費用:紹介が自然に増える状態へ

口コミや紹介が増えると、無理に広告を出さなくても新しい来院につながりやすくなります。
そのためには、飼い主さんが「人に説明しやすい体験」(分かりやすい説明、安心感、ちょっとした気配り)が効果的です。

まとめ:LTVは“経営の健康診断”

図解:LTVにより、現状の把握、改善点の発見から長期的な成長までを考えられる
LTVは売上を追いかけるための数字というより「長く選ばれる土台ができているか」を確認するものさしです。
まずは、平均会計・来院回数・通院年数をざっくり計算してみる。
そこから「どこを改善すると一番効果的か」が見えてくるはずです。

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